オノマちゃん日記

劇作家オノマリコのブログです。たまに真面目なことも書きます。

『大阪、ミナミの高校生3』創作日記5/6 ②

先生からの提案を受けて、二、三年生には「今のわたしの一日」、一年生にはやりたい人だけ「30歳のわたしの一日」を演じてもらうことにした。
顧問の先生とわたしが気になった点は共通していると思う。二、三年生のつくった「30歳のわたし」の像は、あおのつくった作家になる未来以外、どれもトーンが暗い。その暗さが気になった。
また、一年生の作品は自分のネガティブな(と自分では判断している)情報を、他人に知られないようにしていたのも少し気になった。その辺りは、上級生を見ているうちに、「自分はどこまで表現したいか」がわかってくると思うけど。
でもいま二、三年生に「わたしの一日」を演じてもらうことで「こんなことも表現していいんだよ」と伝えられるかもしれない。
ともあれ、一年生の「30歳の一日」は、一年生がしっかり一人芝居を作れることもわかったので、楽しみだった。そして二、三年生に「今のわたしの一日」を演じてもらうのには、緊張があった。

  • せん
    30歳の一日。
    時間になったら起こしてくれるシステム。ベッドが動いて起こしてくれる。朝からちょっとゲーム。VR荒野行動。変身ベルトで服を変身!「パソコンなんて古い道具」。空を飛べる靴で会社に。途中で燃料切れを起こす。
    せんくんは、「いまのわたしの一日」でやった荒野行動をVRにしたり、空飛ぶ靴を燃料切れにしたり、見ている人へのサービス精神がすごく豊富。終始楽しい「30歳のわたしの一日」だった。空とぶ靴、わたしもむかし考えていたなぁ。

 

  • かめ
    30歳の一日。
    自分の車で運転。車の中でテレビをみる。ニュースは「宇宙へのエレベーターが開発された」。車は実は、ちょっと浮いてて飛んでる。会社は私服でOK。同じ会社の五十嵐さんという人が気になっている。五十嵐さん、コーヒーはブラック派。お昼は職場の近くで「彩のいいランチ」を食べる。
    割愛したけど、ほぼ五十嵐さんとのオフィスラブを描いたものでした 笑

 

  • のり
    30歳の一日。
    グループ通話をしている幼馴染達と、シェアハウスに住んでいたい。
    のりちゃんは演じるんじゃなくて、言葉で「こういう状況だったらいいな」という発表。それぞれの恋人とは一緒に住みたくないらしい。そうなのか。

 

一年生たちの考える「30歳のわたし」はどれも明るい。これが上級生になると暗くなるのは、進路が差し迫った問題だからなのか、それとも「若者の未来は暗い」というメッセージが社会からやたらめったら発信されていて、それを17・18歳になると受け取ってしまうからなのか。それとも兄や姉、先輩達の高校卒業後の姿を見ていて、そこから影響されてたのだろうか。

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これは名前鬼やってるときの写真。

 

二、三年生が演じた「いまのわたしの一日」に話を移そう。一人ずつ全員へのコメントは控えるが、みんな素晴らしかった。特に、自分の休日の一日を演じたミッキーの作品は素晴らしかった。彼の住環境を知らなくても彼の心情がわかるように工夫がされていたし、「表現したいことを表現するんだ。見ろ。」という気迫があった。一年生にも伝わったと思う。ここまでできる彼が、どうしてバイトを二つかけもちしている未来しか想像できないのかと思うと悔しくなる。

あおの作品も素敵だった。あおの作品の中には、あおの戦いがあった。その戦いの中で、いまこうして部活に出てきているということを知ることができた。あおは作家になるという「30歳のわたし」の未来を演じていたから、そこにたどり着けるように。その戦いの矛先を、自分の未来を勝ち取るものにできるように。願わずにはいられない。

 

わたしにできることは彼らと演劇を作ることで、そこから一歩も出ることはない。
とはいえ、毎年創作をしていたら、彼らの生活環境はわかってくる。「やりたくなかったらパスでいいから」と声がけをしても、「いまのわたしの一日」を演じることが彼らを傷つけることになるのではと考えてしまう。
彼らの作品は、そのわたしの心配を吹っ飛ばしてくれた。彼らは自分自身の葛藤を「表現」に昇華できている。強かな芸術家たちなのだ。わたしがすることは同情や心配ではない。

 
他に二、三年生が演じた作品を見て、気になったのは「姉」という存在だった。
姉、兄、先輩、OG、OB。
彼らから、妹、弟、後輩が受けるものはとても大きいのかもしれない。
彼らは妹たち弟たちにとって、近い未来だ。
この「姉」の存在を物語に加えてみようと決める。

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すごく好きな人たち。それこそ、いまの部員の姉であり、兄。
彼らがめきめきと変化していった時期を知っている。新しい自分をどんどん受け入れていった。すごかった。また現在もめきめきと変化中という頼もしい人たち。
まあ、まだ卒業して数ヶ月なのでこれからどうなるのかわからないけど、心配していない。困ったことが起きたら誰かに相談できる人たちだ。これからもどんどん新しいものに出会ってほしい。